第46話「岡山ドリルクラブ」
岡山で最初の喫茶店は「広瀬ミルクホール:明治40年」ということがわかった。
しかし、岡山にコーヒーが紹介された明治3年から、37年もの長い間庶民に全く
コーヒーが普及しなかったとは思えなかった。
少なくとも、喫茶店としてではなく食堂のような形態でコーヒーを販売していた店
があるのではないかと考えて、もう少し岡山の珈琲物語を調べてみることにした。
「せやね〜...けど、食堂言うても、日本料理とコーヒーではちょっと変やね」 「だから、西洋料理屋がそのころあったかどうかを調べたんだ」 「で〜...?」 「岡山盛衰記という本に面白く書いてあったんだ。それによると、こんな感じなんだ...」
「コーヒーのことが出てまへんな〜...」 「実はみつけたんだ!」チョット自慢げに... 「どこやねん.....いつやねん?!」 「それは、岡山最初のホテル『岡山ホテル』にまつわる話の中で出て来るんだ... 岡山盛衰記 : 明治35年9月10日 設立年月日に関してはこの3通りが残ってるんだけど、この資料以外に見つからないので、どれが正しいのかわからないんだ...でも、この日付以外の内容はほとんど共通してるから、岡山の珈琲物語としてまちがいないと思うよ!」 「それは、どんな話しなの?」 「じゃ〜、3つの資料をまとめて説明することにするよ...こんなふうに書かれてるんだ...
....................どう? ラッキー...おもしろいやろ!!」 「おもろい、おもろい。 「単なる商売としてコーヒーが岡山に広がったんじゃ〜なくて、西洋音楽の香りをのせて提供されたってこと! ここ岡山でも、コーヒーがある風景は、ロンドンやパリのコーヒーハウスと同じように、文化や芸術の発祥に大きな役割を果たしたことがわかったね!」 「コーヒーの味そのものより、コーヒーが持つ独特の西洋文化の香りを感じて、ハイカラ人達に愛されたんでっしゃろな〜。コーヒー飲みながらワイワイ楽器を持ってはしゃいでいる若旦那達が目に浮かびますな〜」 「楽団までを構成したというから、名前は「ドラム倶楽部」ではなくて「岡山ドリル倶楽部」だと思うんだ。他に資料が見つからないから、本当はどっちか確信はないんだけど、僕は『岡山ドリル倶楽部』だと思いたい。 そして、岡山での本当の意味でのコーヒーハウス第一号は、この『岡山ドリル倶楽部』だと確信しているよ!」
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実は、音楽好きの加川は、評判を受けた楽団にばかり注力し、ホテル業はまったくのお留守状態
流行る訳もなく、岡山ホテルはあばら家同然となったのであった。
これを見て、事情のあった奥村朝恭氏が洋食屋の主人となることを決心し、岡山ホテルを引継ぎ
「洪養軒」として明治34年暮れに開業。女ボーイお艶さんの人気で大繁盛となる顛末は、前述の
岡長平さんの著書に面白おかしく書いてあるので興味ある方はぜひご一読を!!
さて、次回は、岡山で多くの方々の記憶に残る、コーヒー黎明期の忘れてはならない喫茶店を
写真入でご紹介いたします。どうぞ、お楽しみに...!