第24話「どや、おまえも飲んでみるかい...?」
「ここは、1543年の種子島。あそこで鉄砲を持って立っている男がみえまっしゃろ...? 「たしか、ポルトガルの船が漂着して、その時、鉄砲が伝わったんだよネ?」 「そのとおり! 「で〜...。コーヒーもこの時伝わったという話なんでしょ?」 「なに言うてまんねん。あきれて、物も言えんとはこのこっちゃな。 「なんでやねん?」 「ここまで言うてもまだわかりまへんか? 「ええですかって、ええですよ。勉強すりゃ〜ええんでしょ。」 たしかに、ラッキーが言う通り、まったくチンプンカンプンのタカシであった。 いつものようにラッキーの目から写し出された物は、簡単な年表のようなものだった。
「どや? わかるかな...? この年表から見て解ることは、鎖国令までに日本にコーヒーを伝える事ができた可能性がある国はオランダだけっちゅうことやね。 鎖国令がひかれても、オランダだけは長崎出島を通じて貿易が許されていた訳やから、オランダから日本にコーヒーは伝わったと言って間違い無いという訳や!」
「長崎出島は、徳川家光が作らせた人口島や。 家光がわざわざ出島まで出向いて、飲んだことの無いコーヒーを日本で最初に飲んだとは思えまへんな。」 「そうだよね。江戸から出島までの道のりや、当時の情報量からみても、遠方の将軍が最初に飲んだとは思えませんね。」 「ましてや、真っ黒い怪しい飲み物を、将軍がいきなり飲む訳ないわな〜。 まあ、想像やけど、女人禁制の出島で親身になってオランダ人の身の回りの世話をやいた遊女が、日本で最初にコーヒーを飲んだんやと、わては思いまっせ!
<この真っ黒い飲み物は、何という飲み物ですか...? おいしいんですか...? なに? コーヒーを見たことがないのか。 そうか、どや、おまえも一杯飲んでみるかい? えっ いいんですか? じゃあ、ちょっとだけ.......ニガ〜イ.....でも、不思議な味...>
妙に役者付いてきたラッキーは最高におかしかったが、熱演のラッキー説にはタカシも同感であった。 「せやね、やっぱ僕がオランダ人だったとしても、いつも身近にいてくれる女性にまずは飲ませてあげるような気がするネ。 「ところが、日本では、そんなに簡単ではなかったんだな〜これが...」 |
次回、日本でのコーヒー普及に迫ります。
歌川貞秀 筆 「肥前崎陽玉浦風景図」(長崎市立博物館蔵〉